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Picky卒論 Vol.7〈LABUBU ラブブ〉By ソーズビー・キャメロン

若者の研究所に関心がある皆様
初めまして、ソーズビー・キャメロンと申します。
テレビでは「見た目は黒船、中身はオバタリアン」と謳う、タレント兼クリエイターです。
現在は国立埼玉大学にて教養学部に入り、芸術を通して哲学や歴史を学んでいます。
その傍ら、武蔵野美術大学在学時に立ち上げた団体でステージ作りに励む最近です。
私は見た目が無駄に派手でして...
古く言えばハーフ、荒く言えば雑種、お洒落に言えば ”the 3rd Culture Child” と呼ばれる人種です。ルーツとしてはアメリカと日本です。
おまけに、どう見てもセクシャル・マイノリティ(性的少数派)。自認は男だが昔からカワイく&カッコよくいたさに頑固な者です。
ルーツもセクシャルも「多様性」と大胆にまとめていただける時代でどうも助かってます。
本人もよくわからんので、肩身も狭いところですが、マイノリティーのカタマリです。
よく言えば結晶。
[JP × USA × BBA=ソーズビー]の新企画『PICKY卒論』
こんなぐちゃぐちゃな文を書く私が今後ここでする連載は、若者トレンドの克服コラム『PICKY卒論』です。
※picky(ピッキー)=食わず嫌い, 選り好み,等
ついに重たい腰をあげた私が、皆さんの流行に触れてみて、今後私たちがどんなことを留意すべきなのかを考えて書いていこうと思います。
ついでに私もそれを活かして、国境も年齢も性別も関係ない成果物なんか作ったりして!
ああああああ少し真面目なのが出ちゃってる…NG。
もっと簡単に言えば「ジャパニーズ=アメリカンおばさんの若者遠足ルポ」だと思ってください!
私に試して欲しいトレンドや肝試し、みなさんが不可解に思う流行をどしどし募集いたします。
今回は現在一世を風靡している謎の小物、〈ラブブ〉について。

表参道を歩けばみんながカバンにつけている。ネットでは男女関係なくファッションに織り交ぜ、あざとい男子も急増中。
Pickyだった私はこの手の流行りは特に感情もなくスルーしてきた人生なのだが、この際せっかくなのでほじくってみる。
ラブブとは
ラブブが何者かを知らないので調べたところ、香港人の作家によるザ・モンスターズ・トリロジー』という本から出てきているらしく、本の中身は白黒でティムバートンやムーミンのような絵のタッチだ。と書いた矢先、ラブブも北欧の森に住む妖精たちと言う設定だそうな。
POP MART Internationalという中国のおもちゃ会社(キディランド的な)が作者と契約し商品化。サイトをみると、他にも初めてな見た目のお人形キャラクターが売られており、想像も付かないようなキャラクターがたくさん。お隣国のセンスに目が新鮮だ。中でもラブブに火が付いたのも納得。
ラブブも当初そこそこの売り上げの中、去年にBLACK PINK・LISAのインスタグラムに映り込んだことで人気爆発となったようだ。
私たちがよく目にするカバンや股間の横にぶら下がるラブブは「ブラインドボックス」(ガチャガチャ)形式で販売されるバッグチャームらしい。中身が見えないというサプライズ感に加え、希少なレア版も作ることで更なる盛り上がりを見せているのはお分かりの通り、2千円。
ラブブのネット現象
日本では先日、KIDY LANDがテレビで特集されており「ラブブ人気につき、モンチッチも100倍くらいの売り上げです」と店員の姉ちゃんが言っていた。
確かに、モンチッチもすごい流行り方をしていたし、今見ると可愛い。そこに便乗し大阪万博のミャクミャクも人気らしい。個人的にミャクミャクは映画《サブスタンス》のグロい結末を思い出す意味では愛おしいく、そのラインならば超イマドキデザイン。
海外でもラブブ人気は凄まじく、ワイルド&セクシーな人気ロッカーYungbludはファンから貰ったラブブに喜ぶ動画で意外だと高感度が上がった。
https://www.tiktok.com/@yungblud/video/7519202622843260182
Z世代女優で歌手のレネーラップはファンのラブブにサインをしながら「マジでこいつブサイク」と言っている動画が賛否で燃えた。
https://www.instagram.com/reel/DM1UbBdpgYz/
ミーム化もしている。若かりし叶恭子さんの様なインフルエンサー姉さんが鈍りのある英語で架空のラブブを紹介するくだらないシリーズ。
なかでも、「私は世界で唯一の24カラット・ラブブを所有しています」と堂々と虚言を吐く動画がバズった。
あまりに雑に金の塗装をされたラブブも笑えるのだが、彼女の訛りや物言いが頭から離れないと話題になり、人々はその音声を使い自分のペットを紹介する短尺動画がこの夏、大流行。
そしてついに、ラブブの火付け役となったBLACK PINK・LISAがついにこの流行音に便乗したようだ。持っているのはルイヴィトン・ラブブとのこと。
https://www.tiktok.com/@lalalalisa_m/video/7556007856701558029
ズビ的ラブブ観察
個人的にはラブブに対してなんの感情もなかったがここ数年の人気キャラに比べ、可愛さ・謎さ・選べなさで納得はしていた。
若者研を運営するバイデンハウスにもラブブがいたので初めて手に取り、マジマジと見せてもらった。
なるほど…可愛いは可愛いが、大きく目立つのが二点、非対称な歯と表情だ。わざと目に余るデザインにしており、これはショート動画の文化から来ていると私は察す。
何故これらが「ショート動画的」か、短尺動画界はお客によるいいねやフォロー数よりも、一人でも多くのお客でない人に届くために、一旦止めさせる/コメント欄を見させる/共有させるなど、もはやなんでもいいから「画面を触らせる数」(エンゲージメント)が勝負なのだ。
そのためクリエイターたちは2秒以内にわざと気に障るセリフを言ったり、関係ないモノを画面内に置いたり、コンプラギリギリ演出で商品紹介をしたり…と小さい炎上商法を詰め込み集客している。
以上から、ラブブは可愛いらしさに加え、エンゲージメント(反応)の高いデザインと中身がわからない企画性を総じて、若者文化を踏襲しているとしか私には思えず、脱帽。
①ラブブの歯
まず目に着いたのは牙と耳の一部に色が塗られていること、そして歯並びだ。ラブブの歯は9本であり、真ん中で折りたためないような配列になっている。
色に関しては個体差があるようだが、実際歯は種類を出すための施しらしくここでレアさ加減やパチモンとの見分けも付くんだそうだ。
②表情
次に気になったのは表情だ。笑っているが、眉間にシワがよっている。ラブブの設定はいたずらっ子らしい。これも私的にはあざとい戦略であると思う。人が表情を見たときに「ん?どっちだ?」と思わせることで無意識に眺める時間は伸びるだろう。
この定まらない表情はクリント・イーストウッド監督もこだわっている手法らしく、観客に委ねる効果があるんだとか。コメンテーター時に見習えと町山智浩さんが奥さんに怒られたそうだ。実際キティちゃんの口がないのも同じ理由で有名だ。
ラブブとマキシマリズム
ファッション界ともリンクがありそうだ。無印男子をはじめとした〈ミニマリズム〉がこれまでZ世代の人気だったが、これからはその逆で〈マキシマリズム〉がきているらしい。
マキシマリズムとは
「シンプルさと洗練を追求するミニマリズムの逆を行くスタイルのこと。誇張されたフォルム、異素材のレイヤード、華やかでインパクトのある装飾など…
制約のない自由な自己表現を可能… 」(装苑ONLINE より)
ラブブこそ誇張されたフォルムで、異素材(しかも異生物の)レイヤード、華やかさとインパクトそのものである。確かに、近年は男子でもパールを初め小物をジャラジャラつける人が増えた。ロエヴェなど、ブランドが革のカバンに合わせて作った革のチャームをわざわざ付ける男子がインスタグラムでも妙に増えていると思う。
この流行は昔からジャラジャラとカバンなどに付けていては「まーただよ」みたいに言われていた私には嬉しい反面、もう装飾に飽き…ていうか失くし…シンプルに着こなしたい頃でもあるが、世の中はそれだけ装飾品とオリジナリティに魅了されている頃らしい。
しかもこれは大チャンスだと思う。何故なら各ブランドが自社のマスコットやロゴ、キャラクターを可愛く商品化すれば男女共にカバンなどにつけてくれる時代だからである。
チャームと言わずとも、バンダナやアクセサリー、スマホなどの肩がけ紐も該当するだろう。
更にここで凄いことは対象がジェンダーレスだからである。最近のアメリカ男がカバンのチャームどころかカバン(purse)を持つことにすら驚きだ。アメ人の父には「男はパースは持たん!」とよく言われたものだった。ここ数年のパールといいパースといいパー子といい流行というのは恐ろしい。
ここでも一つ、海外カップルのインスタ流行を。彼女が彼氏に「お願い、カバン持って」みたいなそぶりをすると、男子は表情を変えずにカバンを取ってあげ肩に添え颯爽と歩く。Sex And The Cityでも使われたto be realのサビに合わせることで、彼氏の服装に彼女のカバンがどうも似合っちゃう、という動画。
黙って持ってあげる紳士さの現存 × 彼女のものを着こなし颯爽とする彼氏
+ゲイミュージック
で、クスッと眼福な流行である。
また異素材のレイヤーという点でもマキシマリズムは危険を孕んでいて期待。何故なら重ね着(レイヤー)は無難でいてとてもセンスが問われるから。とんでもない仕上がりになる例も多い。
ラルフローレン的なサイジングをしっかりとしたものから、美大生や美容師たちみたいにナンセンスでも重ねます、の開き直った魅せ方まである。とはいえ無印男子を始め、無難が正義みたいな流行が終わってくれる分には個々人のセンスが丸出しになっていく世代かもしれない。
身につけているもので性格や感性や趣味が図れるのは吉と出るか凶と出るか!!
やってみよう:ベッキー式携帯ストラップを再来
(以降、通称・敬称として「ベッキー」表記)
友人とキディランドに足を運ぶと、ラブブに便乗するようなサイズ感の商品群を物色しつつ、あることで懐かしんだ。
「昔さ、ベッキーが携帯電話にジャラジャラストラップをつけているの、真似しなかった?」
友人と私は、高校時代から流行なんか一切見向きもせず、ゴンチャ(タピオカ)もTikTokも無視、それどころか嫌な目つきをまでしてきた、そう捻くれた2人がついにキディランドにいることも事件だったが、なんとベッキーの真似っこを改めてしようという流れになった。
理由としては、ラブブよりは選べるから、平成感が懐かしいから、身も蓋もない2人の遊びに少しの企画…総じて、寂しいからでしょう。
私としては飲み仲間の大人たちが昭和の8センチCDが安くて懐かしいと買い込み聞き合う遊びを横目に羨ましさもあったのだろう。
また近年、隙間物件に登場しまくるガチャガチャ屋さんにも彼女と入り「昔はこんなに高くなかったじゃん、100円だったよね(怒)」とか言っては舌の根も乾かぬうちに
「ヤバイこれ可愛い、600円(喜)」なんて盛り上がっていたこともきっかけだった。
お台場にいた私たちはすぐさま実行した。友人は改めてハマっているというケロロ軍曹のガチャガチャをして、ファースト・ベッキーを手に入れた。
対して私は、これ可愛い!となるも「一旦考えるわ」のくだりを8品くらいやり、結局その日は何も買わなかった。
やろうといい出した時点で問題は値段ではない。本当に私はPickyなのだ。その昔は40センチくらいに及ぶ携帯の3倍は大きいジャラジャラ・ベッキーをぶら下げて自慢しに学童クラブへ出向いていたのに…自分のノリの悪さにがっかりした。
次週、葛西臨海公園にいた私たち…セカンド・ベッキーを手に入れた友人を横目に私も、「お土産だと思って、これだけは無理に選ばなければいけないんだ」と自分に言い聞かせた。
「やっぱり最初は」と私は、アンパンマン・シリーズをガチャガチャした。買った理由は光るストラップでプラスチック、ということで拭けて衛生的だし災害時にも使えるかもだから。となんてつまらない理由…。
私の記念すべきファースト・ベッキーはバイキンマンだった。バイキンマンであれば、どこにつけても菌が繁殖したみたいな意味合いになるし良い感じ!!とピッキーも納得。
ミニマリズムから早10年~反対を往く若者~
2000円もして中身が選べないラブブ流行の凄まじさを500円のガチャガチャで気がついた筆者であった。
そして人はモノに偏見を持っていたとしても「自分もターゲットなんだ」と気がつくと少し心が動くというのも今回、身を持って学んだ。
先ほど少し論述したが、やはり装飾品が増える理由には〈個の時代〉にどんどんなり、寂しん坊が増えてきているというのもあるのではないだろうか。『こんまり』なんて日本人の名前が断捨離の英単語になるほどの10年前のミニマリスト流行がこんなにも早くモノで埋め尽くされることはあるだろうか。
ミニマリストやそれこそ近藤麻理恵さんのネトフリ番組なんかは「自分が本当に好きなものを見つめよう」という幸せ探し的なコンセプトで消去法として断捨離がクローズアップアップされた。
アメリカでは〈タイニーハウス〉の番組も増え、
「大きい家から一家揃って、敷地内にタイニーハウスを複数所有するスタイルにしました」
なんて人も紹介されていたほどだ。
このブームはコロナ中もゆるーく続いてはいたが10年経ち、この跳ね返り用。しかし、今流行のバッグやチャームなどもよくよく見ると革のものだったりするので、総じて見ると…
〈ミニマリスト〉により物資の見る目がついた消費者が、〈マキシマリズム〉に自分のアイデンティティを選定し表現する…
こんな感じ。前向きに締めてみよう。
そして装飾を楽しみ始めた若者が愛でるは、ラブブ。素材も生物も視覚的にも矛盾(レイヤー)を孕んだアイコンであることは、私たち若者がそれだけ不確かな情報を浴びまくる混沌とした時代に生きることを象徴しているのではないだろうか。
そして早速、私は恐怖にさらされている。2010年ごろ私がコレクトした私の〈平成ベッキー〉はどこに行ったのだろうか…バイキンマンをはじめとしたウチの〈令和ベッキー〉たちはどこにいくのか、というかマキシマリズムはいつまで続くのだろうか。
著者:ソーズビー・キャメロン
CREATOR:
🌱埼玉大学教養学部在学
🎭︎学生団体TinyTheaterではプロデュース業に励む。興行実験機関として全国巡業するなどし展開中。
PERFORMER/CREATOR:
🪄NHK Eテレ『えいごであそぼMeets the World』にレギュラー出演中
🇩🇪️TinyTheaterベルリン公演での実験楽曲が現在公開中
https://m.youtube.com/watch?v=ihDTQSCG84c
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