単身世帯シニアむけ市場・孤独市場の事業機会と会話型ECプラットフォーマー
シニアの単身世帯は今後も増加見込み
以下のYahoo!ニュースによると、2024年時点で65歳以上のシニアの単身世帯は約3割を占める。
今後間違いなくシニアの単身世帯は増加するであろう。
単身世帯は増加中…高齢者がいる世帯の構成割合をさぐる(2025年公開版)
単身シニアの問題は孤独死ではなく、孤独感
孤独死の問題に加えて今後は「孤独感」が問題になるだろうと私は考える。
一日中誰とも会話をしないで過ごす、社会から隔絶された寂しさに苛まれるシニアは今後増えるだろう。
単身シニアの限られた社会交流チャネル
現状、単身シニアが社会と交流する場は以下のようなところだと想像する。
- デイケアサービス・介護施設
- 通院先
- 買い物先
- 身内・親族(電話・LINE)
- 友人・知人
- サークル・会合
- パート先
- オンライン
心身に不調があれば家から出られないのでこの交流場はより限られたものになってくる。家の中で一人で居れば当然会話をすることもなくなっていく。
人的タッチポイントのデジタル化
単身シニアにとっての悲観的未来は、人的タッチポイントのデジタル化が進んでいることである。コールセンターに電話をかけてもなかなか生身のオペレーターに繋がらない。それどころか、AIオペレーターに繋がる場合もある。
また、シニアが病院に足繫く通うのは診断・処方を目的としているのではなく、寂しさを紛らわせたいからであるともよく言われるが、これも今後病院オペレーションがデジタル化されると寂しさの解消としての通院は意味が薄れていく。
逆に言えば、単身シニアは会話を求めており、これが動機として人的タッチポイントをビジネス上の強みとしてあえて残すサービスも根強く残ることがうかがえる。
未来のシニア像:デジタル・アクティブ・シニア
一方、数十年もたてばアクティブシニアならぬデジタル・アクティブ・シニアなどが登場するだろう。SNSで積極的に他者と交流するシニアである。海外ではグランフルエンサー(Grandfluencer)と呼ばれているシニアのインフルエンサーも登場しており、SNS上でシニアの交流は活発になることが想像できる。これが新しい形のゲマインシャフトとなるのだろう。
孤独感を紛らわせる対話型AIソリューション
とはいえ現代の単身シニアは、子供・孫とのLINEくらいが限界かと思われる。すでに対話型AIによるソリューションなどが登場している。Starley株式会社が開発する茶の間cotomoは、2025年4月から横須賀市と共同で老人の孤独感を解消する可能性を実証実験している。
未来の単身シニア市場の事業機会
さて、このような状況をまとめると、人的タッチポイントが社会から今後減っていく中、単身シニアの孤独感を埋めるソリューションはすでに需要が見え隠れしている、ということである。
私の感覚では、近い未来、物売り+会話を付加価値とするEコマースプラットフォーマーが生まれるような予感がするのである。Amazon・楽天のような総合ECにて、AIオペレーターと会話をしながら物を買えるような仕組みである。
対話型AIオペレーターが「子供の頃好きなお菓子はなんだったの?」といったシニアのユーザーにたわいもない会話を投げかける。「そのときはこんなお菓子も流行ってたよね?」「贅沢と言えば、今の子どもはこれを食べているらしいよ。」「お腹すいてきたね?今日はこの駄菓子はどう?」とその反応から商品を提案するような仕組みである。
シニアの昔話を引き出しながら、好きなものを聞き、関連した小話をした後、商品を提案するようなプロセスである。技術的にはそこまで難しいものではなく、すでに実現可能だと思う。
筆者 | 石崎 健人
Managing Director 代表取締役
Consumer Market Intelligence
慶應義塾大学卒業後、外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。 Weiden HausのFMCG、Luxury、Technologyのリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。